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東洋太平洋ライト級チャンピオン

 三垣 龍次

9月20日、さいたまスーパーアリーナで初防衛戦を行った東洋太平洋ライト級チャンピオン、三垣龍次。KO率80パーセントを誇るハードパンチャー金井アキノリ選手(姫路木下)を挑戦者に迎え、ダウン応酬の激闘の末、見事、6回レフェリーストップ勝ちを収めた。日本王者時代に逃していた“初防衛”である。この日のリング、ダウンを奪い返した時、勝利が決まった瞬間、いつになく三垣が感情をあからさまにしていた。それは、チャンピオンとしての初仕事を完遂した安堵、感激のあらわれ、と見えた。が、三垣の激情の所以は、それだけではなかった。計量後、不測の事態に見舞われ、周囲のサポートを受けてなんとかリングに上がったボクサーの、「絶対に負けられない」という勝利への執念。それが、男をさらに熱くした。東洋太平洋ライト級チャンピオン、三垣龍次がその戦いを振り返り、現在の自身を語る。 (2010年10月)

           

――初防衛の後、十分に疲れは抜かれたのでしょうか。

 そうですね。10月のうちに身体をつくって、11月からしっかりと動いていこうかという計画でやっています。

――今回は計量後、アクシデントに見舞われて、たいへんな思いをなさったと試合後の控え室で記者に語っていました。計量後に生肉を食べてしまってお腹をこわしたということで、当時は笑い話のようになりましたが、実際はハードトレーニングで身体が相当弱っていた、ということではないかと思います。ハードパンチャーの金井選手が相手ということで、かなり追い込んだ練習をしたのでしょうか。

 それはあったかもしれませんね。試合1週間前くらいから右腕が動かなくなるという事態に陥りまして、全体のバランスが悪くなってしまいました。もしかしたら身体自体が疲れ切っていたのかな、と思いますね。金井選手のことは、やはり不安はありましたね。実際にどんなパンチなのか、っていうのは分からないので。伊波カスティーヨ選手との試合を見て、上背があって、右アッパーが強いという印象を受けました。これはあんまり近づくと危ないな、と。あと、人から聞いた話では右ストレートが強い、とも。話を総合すると右主体であることは間違いないかと。だから自分の左ジャブが生きるかな、とは思っていました。でもまあ正直なところ、試合やるまではわからないな、と。危険な相手だろうと思っていました。不気味でしたね。生肉を食べちゃったのも、普段は絶対やらないことなんですけれど、今回は相当身体が疲れているって自分で感じていたから、「よし、元気をつけようと」思わず生肉を食べるなんていう行動に出ちゃったんでしょうね。もともと体調がよくなかったんだとは思います。

――試合数時間前まで点滴を打っていたとのことですが、そのコンディションでよくリングに上がることができたと思います。

 脚元はウォーミングアップの時から全然力が入らなくて、これはまずいなと。コンディショニングトレーナーの三好先生にずっと脚をマッサージしてもらったりしました。いい状態ではないっていうことは明らかでしたね。まわりはとても心配していたと思います。

――ご自身はどうだったのですか?

 みんなの心配そうな顔が見えたので、自分自身は、身体は動かないけれどとにかく集中力だけは切らさないように、迷惑かけないように、とだけ思ってリングに上がりました。絶対に負けない、と思って。

――気力はみなぎっていたわけですね。

 はい、そうです。気力はみなぎってました。それに、あれだけ練習してきたわけだから1日でそこまで崩れないんじゃないか、とも思うようにしましたね。

――2ラウンドに右ストレートを痛烈にカウンターされてダウンを喫しました。あのダウンは“効いて”いたのでしょうか。

 自分のイメージとしては、そんなに効いてはいないと思ってたんですけれど、ビデオを見ると、ふらふらでしたね。やっぱり気力はあるけど脚はふらふらになっているな、ってのが、自分でわかりました。効いてフニャフニャになっているわけじゃないけれど、脚には力がはいってない。頭にダメージはなかったと思うんですけれど。パンチの影響なのか食中りからなのか…。その後は動きは悪かったですよね。攻めては行ってるけど。

――逆に見ている方には、ダウンの後に攻撃を強めたのが印象的でした。まるでスイッチが入りました、みたいな。まったく下がらず、「よし、いくぞ!」っていう気持ちが見えました。

 そうですね。みんなが心配している顔をみると、やっぱりもう絶対に負けられないな、と思って

――ああいった苦しい状況で、あのような強い気持ちを保つ原動力になったものは、そういう思いですか?

 みんなのサポートですね。結局、食中りで腹の中空っぽで、点滴分くらいしか計量から増えてなくて。少しでも何か入れた方がいい、って、三好先生がりんごをすりおろしたものを用意してくれたり、本当にみんな全力でサポートしてくれたんです。MT総力結集しての戦いだったと思うんです。そりゃ、負けられません。

――三垣選手の試合はどの試合も劇的ですが、今回はとくに喜んでいるように見えました。

 今回はたしかに喜びましたね()。ダウン奪い返した瞬間の喜び方も尋常じゃなかった。こっから流れに乗ろうと思ってね。けっこう、狙っていたパンチだったんですよ。2回にダウン食った、あのタイミングと同じイメージだったんですけれど、いけるいけるいける、っていう気持ちで向かっていきましたね。

――気力勝ち。気力で激闘を制した感がありますが、ご自身ではどう思いますか?

 気持ちの勝利だと思います。身体はもうぜんぜんぼろぼろなわけですから。

――今回の経験から学ばれたことは何でしょうか。

 技術的にもあまり、試合前からリズムに乗れてなかったんですけれど、試合終わってから、修正できてきている感覚があります。何で悪かったのかが、わかってきたような。だから、次の試合は今回よりはいいコンディション、いい技術を見せたいと思いますね。ボクシングの要素一つ一つで考えるのではなくて、もともと全体として考えるタイプなので、個々にどこが変わったというのは言えないんですけれど。試合前に全体のバランスが崩れていたって言いましたけれど、それを修正するヒントになったのは、試合のビデオをみて、自分のバランスが崩れている時にはどういう特徴があるかということが見えてきた。こうだからこうなった、っていうふうに。こんなふうに学びながら、自分のボクシングをつくっていきたいですね。生肉を食わないとか、そういうのは、論外の話で()

――三垣選手の戦い方というと、毎回どうしても気になるのが、被弾が多い、という点ですが…。

 ある意味、パンチもらわないと火が点かない、じゃないけれど…()、あんまりもらわないで試合を終えるタイプじゃないですね。やっぱり、打ち勝って、勝ちたいんですよね。見えてないパンチをもらったり、もらうイメージがなくてもらうと効いちゃうんですけれど、頭の中では打ち合いのイメージはできているので、パンチもらうのも、想定内。想定内でもらっているパンチは、耐えられるんです。でもやっぱり、相手の得意パンチは危険。もらいたくはないですよね。それに世界レベルの選手をこれから相手にしていく場合、自分のイメージ、自分の想定内におさまらなくなると思うんで、やっぱりパンチは食わないように直していかなければいけないとは考えますね。

――風貌に似合わずというと大変失礼ですが、野趣あふれブルファイターではなくて、きれいなボクシングをする印象がありますね。

 基本は打ち合いが好きなんです。打ち勝つのが好き。そのためにはきれいなスタイルでないと、スキが多くなると思うんですよ。なるべくスキを小さくして勝ちたいので。いい打ち方をしてスキをなくせば、相手が攻めるところが狭くなるし、避けやすくもなる。スキばばらばらあると、何もらっても倒れちゃいそうな気がします。根本的には、高城会長伝授のスタイルですね。自分なりに理解したらこういう形になった。高校時代はもっと、一発一発、しっかり打つスタイルでした。倒し倒されの。それでも打ち合って勝っていくんですけれど、プロになったら倒されたら終わりだから。

――アマとプロでスタイルを変えたということですね。

 相手との距離という点で、違いがあります。アマチュアの教えって、ちょっと距離が近いんです。プロはリングを広く使いますよね。自分は背が低くて、ずんぐり構えちゃうと、相手に大きくリングを使われるとキツい。体格が小さくても長いジャブとか打てるようにしたい。そう考えると、高城会長の教えが合っている。一発一発長く打つイメージでやっているので。時と場合だと思うんですがね。まあそこらへんで、自分なりに理解して。要は自分が何をしたいか、なので。言えることは、相手との位置関係、距離感というところでは、今はかなり理想形に近付いているっていうことですね。

――今後、さらに上のレベルに挑んでいく上では改善が必要な点は?

 そうですね。基本、ガード低いですからね()。もらいますからね。むかしから、っちゃあ昔からなんですけれど。打つのは打つんですけれど、もらいますからね。まあでもあまりもらわないように、しなければなりませんね。それはこれから勝ちながらの課題かな、と。

――勝ちながら、との言葉が出ましたが、次の防衛戦がすでに決まっています。12月、またも強打の高瀬司選手(大阪帝拳)を迎え撃ちます。相手について、どれくらい情報がありますか?

 正直なところ、データ以外はあまり知らないんです。ビデオ見たり作戦立てたりは、これから先の話ですね。

――試練を乗り越えての初防衛。この一勝は大きかったのではありませんか?

 自信にはなりましたね。たしかに。周りの有難味も味わいましたし。やるのはあくまで自分なんですけれど、一人でやっているんではないんだな、と、今回はとくに感じました。ほんとうに有難かったです。

――最後に一つ。アメリカで頑張っている岡田隆志選手の活躍は、MTジムの下半期の巻き返しに影響していると感じますか?

 そりゃ間違いないです。あいつと手あわせしていた選手たちは実際今、勝っていますし、自分にとっては高校・大学の先輩ですし、もちろん刺激になってます。他の選手たちも。岡田と同じように、こっちでも気持ちの強さというのをみせていきたいと思いますね。